ダラス日記 その2

本文中一部,撮影を含めて結構危険な行為をしています。似たような行為は自らの責任でお願いします
写真は全て名刺サイズのオモチャデジカメで撮影しています。ボケ,ブレ,変色等はご了承を。

8月9日 (土)

ダラス・フォトワース空港(DFW)の近くにあるアメリカンエアライン博物館(C.R.SMITH MUSEUM)で大ハシャギ。アメリカン航空のプライベートな施設の為か,公共のアクセス機関が全くない為か,英語のガイドブックにも無くダラスの中でも結構ディープな場所らしい(こういうのが嬉しい)。

 
窓越しにDC-3が見える。上写真の手前が守衛所

この手の博物館で日本でありがちの学習プログラムというよりは,アメリカン航空の社史というべきか。中は特に子供向けという訳ではなく,どちらかというと社内向け&マニア向け。そういえばこんな感じの博物館(資料館)はおいらの勤務先にもあったっけ(某本拠地の巨大工場の中にある)。日航や全日空もやればいいのに(内向けにはあるのかな)。

中で1時間毎に上映されているフィルムは良くできていて,劇場の奥行きが狭いのにスクリーンが大劇場並み(かなりの広角レンズを使っていると思う)。大画面に似合うように,ビデオではなく35ミリ。おそらくデジタル音声。イスはファーストクラス(と,パーサーの制服を着た案内人のジイサンはシャレで言っていたが,飛行機の本物の座席)。上映前にはパーサーから『本機はまもなく離陸致しますのでシートベルトをお締め下さい』とのアナウンス(英語だが)。子供が大ハシャギでベルトを締めはじめる。離陸すると美しい映像やアメリカン航空で働く仲間たちの紹介。DC-3が飛んでいる姿が見られます。DC-10が現役なのと,ニューヨークのWTCが映っている(あれに突っ込んだのはアメリカン航空なんだよなぁ)ことから展示変えはそう頻繁ではなさそうだが,奇麗なので『まもなく上映致します』の場内アナウンスが流れたら行ってみるのも良いかと。

ここで展示されているDC-3は後ろの入り口にステップがついていて,実際に乗ることができる仕掛け。乗ると左手(最後尾)がトイレ,正面が機内サービス用のキッチン,右手が客席。小さめの座席が1-2の配列で並んでいる格好。頭上は網棚。DC-3は初めてなのでちょっと興奮した。こじんまりとはしているけど,なかなか居心地の良さそうな機内。もっとも,電源が落ちているので中は凄く暗くて化け物が出そうな展示だったが。そういえば種ともこのダイエット・ゴーゴーのプロモに出てくるオモチャの飛行機はDC-3。でもあれはノースウエストだったかな。触れあった記念に売店でDC-3シャツを購入。

 
DC-3展示機と室内(完全に露出不足)
 
(左) 日本線就航記念グッズらしい。升の中の袋には何故か東急インの刻印が。
(右) 売店に置いてあった,なぜかAIR DO。(その隣はデルタのパワーパフガールズ機)

ミュージアムの併設売店,TWAグッズが置いてあるのがウリ。というか結構マニアックな店。TWAグッズは,機内備え付けの安全案内や機内食のメニューの紙。TWAと書いてなければ『お前,飛行機から盗んできただろ』と言われるようなモノばかり。アメリカン航空と合併してしまったので今となってはかなりのレアアイテムか。

9.11募金

空港の後に向かったのが定番の観光地らしいウエストエンド地区。レンガ作りの古い建物が並ぶ一角だが,よく整備されていて危険な香りも怪しい香りも無し。一番奥にあるショッピングセンターは雰囲気が札幌にあるサッポロファクトリーに似ている。(って,オリジナルはこっちか)

 
ちゃんと撮れてなかったので次の日に取り直した

所謂土産物店のビルかと思いきや,土産物屋のたぐいはそんなに無く,変なアート系の店(絵と置物(中国の彫刻)屋と,魔術系の蝋燭屋)やアンティークショップ(だと思って入ったら新しいモノも結構置いてあった。シンプソンズまでも。ここは土産物店も兼ねていると思う)。カントリー物に始まり,古家具から古雑誌,古映画のチラシ,古本,古道具。古道具が面白く,アンティークな飾り以外では一切利用価値無しのモノばかり。SHARPと書かれた古そうな携帯テレビ,野球板,弦の張れそうもないチェロ,真空管の箱,錆びた車のナンバー,人形,絶対音なんか出ないトイピアノ,など。土産物が邪魔だが,入り浸ると面白い店。

   
 
(左下) ガチャガチャもここではアンティーク調  (右下) アート系

入り口のチョコレート屋から漂ってくる強烈なカカオの匂いに絶句。地下のゲーセンでは子供が楽しそうにハシャいでいた。

ダラスに来たら絶対にここに行けと言われるシックスフロアミュージアム。一見の価値有りかどうか確かめに向かう。入口にあるレセプション,メニューは$10の入場券のみと,$13のWith AUDIOが選べる。WITH AUDIOはカセットテープの案内。これは日本語も選べるのでお勧め。というか,2回目でなければこのWITH AUDIOを選ぶべきといった感じ。このテープは売店にもあったので,2回目からはマイAUDIOというのが出来るのかという浅薄な考えは売店のテープに日本語が無かったことで打ち砕かれ状態。たまたま在庫切れだったのだろうか。

 
(左) 正面から
(右) ×印が撃たれた地点。道路にペイントされている。

入場券の行列は長い。アメリカのこの手の行列は時間がかかるのが特徴。選べるメニューが多様なのと,支払にいちいちクレジットカードや小切手を使っているから。その辺は日本の方が合理的か? ここは入口に空港と同じX線の荷物検査と金属探査機がある。ここから撮影禁止。ここを抜けると,文字どおり6階へのエレベーターに乗ることになる。

6階に上がると,(1) 彼がどのように当選したか (2) 当選してからの約1000日間,どんな功績をあげたか (3) 次期大統領選の遊説の意味 (4) 彼がダラスに来てから どのような状況で,どのような隊列で,どのような場所から,どのように撃たれたか。(撃ったとされている窓は当時そのままの状態で保存されている)(5) 病院にはどのように運ばれたか。(6) 一緒に狙撃された州知事も含めて,病院ではどう対応したか。(7) 葬儀の模様(日本での追悼会の様子も取られていて,坊主が次々とお経をあげている光景が生々しい。献花に堤康二郎の名があり時代を感じる) (8) マスコミの報道,犯人とされたオズワルトはどのようにして死んだか。(9) オズワルト単独犯行説の検証 (10) JFK後のアメリカ。など。これらが順に学べるようになっている。公民権運動前後のアメリカの歴史を事前に学んでおくと理解が深まる筈。演出がなかなか凄く,涙が出そうになった。

 
(左) 駐車した場所と同じ番号の穴に駐車料金($2)を入れるシステム。こんな所もアンティーク。
(右) エレベーターは後から増設したように見える。

夕食は中国人の経営する謎の日本風ラーメン屋に。メニューに麺は日本製と書いてある。あまのじゃくなおいらはそこで中国風の味噌ラーメンを注文。出てきたら本当に本物の中国風。さすが中国人。

 
 
日本製の麺を使用しておりますと書いてある。

8月10日 (日)

前の日にダラス日記その1を夜中1時半近くまでかかって書いたので,朝はずっと昼寝。メイドに起こされる。内鍵を入れておいてよかった〜

是非とも行きたかったダラス美術館へ向かう。とりあえず電車に乗ることから。隣の席は華僑と思われる家族。女の子が歌を歌いながら肩もみをしている。結構慣れた手つき。あれは上手そう。前の席は中国人。ダラスの電車は中で携帯電話を使う人を見たことがなかったのだが,中国語でベラベラと周りの迷惑も考えずに電話している。携帯電話にしても,座席を譲ることにしても,ダラスはフレンドリーでかなりマナーが良い所だと見ていたのに,こいつには周りが見えているんだろうか。

 
今日はここから散歩の始まり。

交通案内図によると,美術館へはDARTのCityplace駅からM-LINEと呼ばれるストリートカーに乗って終点で降りれば目の前らしい。M-LINEはdart.orgで調べると日曜は正午から午後のみの運行。正午にCityplace駅に着くようにホテルを出発。この辺りは地下鉄になっているので,かなり長いエスカレーターを登って地上へ。案内の通りの出口を出ると50m位先にストリートカーの停留所が。

長いエスカレーター

エスカレーターと階段を抜けると,そこは終点。

 

例によって強烈な日差しの為,屋根も何もなくただ柱に表記があるだけの停留所で待つのは自殺行為。駅の出口はドア付きで,中は冷房が効いているのでそこで待つことに(札幌の地下鉄の出口がドア付きで,中は暖房が効いているのと同じような話だろうか)。10分程待つと随分と相当強烈な格好のアンティーク・ストリートカーが登場。美術館に向かうには格好のアイテムかも。

 
いい日旅立ち。

中は随分とフレンドリーな運転手のオヤジと,終点まで乗ってきてそのまま引き返した女の子の2人だけ。女の子はハシャギまくりでオヤジにあちこちの観光案内の説明を受けていた。お陰様でおいらは何も聞かなくても自動的にWestVillageのお店やMcKINNEY Ave.のお店の知識が付くことに(笑)。電車の速度も早歩きとあまり変わらない位なので,観光には良いのかも。オヤジに貰ったリーフレットによると,1920年製の電車らしい。アンティークを越えているな,これ。もちろんエアコンなど付いてないが,ダラスの日差しは日陰に入ると扇風機でも十分涼しい。窓も全開。正面の窓も開いているので風が凄く気持ちいい。

 
女の子に案内をする上機嫌なオヤジ

終点に着くと日本人がこの電車にカメラを向けていた。フレンドリーなオヤジは早速女の子にカメラを持たせ,彼とオヤジで記念撮影してた。なかなか微笑ましい光景。すぐ隣はもう美術館。


日本人と記念撮影中

やっと目的の美術館。M-LINE側から入ると裏口の中庭から入ることに。屋外展示もなかなか良い感じ。噴水でマイナスイオンを一杯に吸い込み,館内へ。ドアが開かない。親切なオバサンが教えてくれた。このドアは非常に固いだけだよと。

 
 
 

裏口から入るといきなり現代アートから。入場料を払ってないのでレセプションを探し,そこで$6払ってバッジを貰う(これがメチャメチャ安いと後で気付く)。これを見えるところ(普通は腕輪として)に付けておけば館内フリーらしい。特に順路なんてない。特に撮影禁止とも書いてないが,英語でいちいち近くにいる学芸員に許可を取るのも面倒なのでカメラは片づけ。

現代アートの部屋の一つ,特別展になっている。EIJA-LISSA AHTILAのThe House Taloという作品。何故か入り口に暗幕が。入ってみると何とムービー。初めはおいら一人で後は通り抜けの人ばかりだったのが,おいらが釘付けになって見ているとどんどん人が増えてくるところが面白い。この作品,スクリーンは/  ̄ \という状態で3面あり,それぞれ違う絵を映しているが全く違う絵ではなく,一つの物語を違ったアングルから捉えている。その感覚は舞台を見る目線に似ている。映画はカメラマンの目線でしか物語を追えないが,この作品はそのカメラマンが仮想的に3人いる。どれか一つは普通の映画だが,あとの2つは舞台で物語を進める役者以外を追うような目線で同じストーリー上の別の何か(同じ何かの別アングルのことも)を映している。中身は大林宣彦のHOUSEのような家に住んでしまった女の子の日常生活。アメリカ人にも分かるように英語の字幕付きだが,字幕を追っていると映像の面白さを見逃してしまう。是非とも吹き替えで見たい作品。

ヨーロッパの油絵を釘付けになって見ていたら(これも何の特別な飾りもなくいきなり美術の教科書に出てくるような大作が現れるものだからびっくりするのだが)親切な学芸員が。ディバッグを持っている状態で集中して見ていると盗難の危険があるからコートチェックに預けてみてはと。コートチェックの意味がわからなかったのだが,話を聞いているうちにクロークのことだと理解。早速場所を教えてもらう。表口のカフェの一角にコートチェックが。ここで凄いことを発見。表口近くの部屋でやっていた特別展は何とルノワールではないか。どうりでここだけ人が多い筈だ。

ヨーロッパの続きを見た後に,早速ルノアールを拝見。アルジェリアがテーマなのに何故か女の人や裸婦ばかり(笑)。誰の趣味なんだろか。で,ここだけ人が多いながらも落ち着いて見れるところが吉。ロープなんか張ってないので,作品の目の前まで行って技巧を確認することも可能。これは嬉しかった。これで$6はメチャメチャ安い。おまけに木曜の17時以降は21時まで無料らしい。治安の心配さえ無ければ嬉しい話なんだけどなぁ。

アジアやアフリカのコレクションを抜けた後(日本のコレクションが妙に半端なのが笑えたが,他もそうなのだろうか。中国は興味が無いのかほとんど無かった),お楽しみのアメリカ美術へ。アメリカの画家の絵なんて日本ではキワモノ扱いなので見る機会はほとんどなし(実際にソノ手のモノが多いのも確かなのだけど)。ヨーロッパ調の洋画が結構あって楽しめました。調度品やガラス工芸品も良い感じ。100年以上前にアメリカでリバイバルブームとなったゴシック物も(美術館にある位だから,アンティークショップにあるナンチャッテ物でなく(こちらの方が面白い),ヨーロッパ調のかなり気合いの入った物なのだが)。

凍えながら売店で目録を買ったあと,裏口から出てひなたぼっこ。そのままCathedral Santuario de Guadalupe教会へ(誰か読み方教えて下さい)。入口を覗いてみると人だかりが。ジュースやアイスの屋台も沢山。中に入ってみると,丁度日曜礼拝の最中。別室ではバザーも。

 
 

教会の後は付近をちょっと散歩。かなり時間が経過してしまったので昨日ちゃんと撮れてなかった写真を撮りにウエストエンドのショッピングセンターとシックスフロアへ。『定番の観光地らしいウエストエンド地区。レンガ作りの古い建物が並ぶ一角だが,よく整備されていて危険な香りも怪しい香りも無し。』と昨日書いた筈が,今日は乞食に2回も声をかけられる始末。う〜ん。

 
 

日記は第三部につづく