飴屋工房

飴屋製作所では,こんなガラクタを作ってます。
(こいつらを参考にして何か作って動かなかったり壊したり怪我したり家運が傾いたりしても飴屋は一切の責任を負いませんしサポートもしませんのでヨロシコ)


サウンドドロップジュークボックス

作成 : 2007.5  掲載 : 2007.6.23

サウンドドロップジュークボックス

しばらくぶりの飴屋工房。今回のネタはガチャガチャで流行のサウンドドロップ。真ん中のボタンを押すとゲームやテレビの効果音が鳴るというシロモノ。これに嫁がハマってしまったのが5月中旬。以前あったスーパーマリオが欲しかったらしい。それもコインの音。ボタンを押すとチャリーンって鳴る奴。友人に頼まれたらしいのだけど時既に遅し。初回入荷限りのナマモノな業界なので,人気シリーズは商品が出回っている時期も短く,すぐに店頭から無くなってしまう。散々探した挙げ句,秋葉原のラジオ会館の中に唯一残っていたガチャガチャを発見。スーパーマリオじゃなくてニュースーパーマリオだったのだけど,コインの音は同じだから良いことにしよう。中身バラ売り店はコインが無かったので,仕方が無くこの機械でコインが出るまでチャレンジ。で,大量のダブリを貰った訳なのだけど,折角だからバラして遊んでみたのがそもそものキッカケ。

中は結構よく出来ていて,LR44相当の電池2個(中国製xellexのAG-13だった)とミニスピーカー(圧電ブザーではなく,マグネットがついたオモチャ用),そしてメイン基板だけで出来ている。メイン基板に乗っているのは電源バイパス用のコンデンサと,抵抗が一つあるだけ(後でテンポ変更用と判明)。出力用のカップリングコンデンサーが無いので,スピーカー端子の左右各々交互にパルス変調を加えるタイプと予想。さて,基板をよく見てみると,ハンダでショートさせる部分が5箇所ある。そのうち4箇所は中央のスイッチを通ってVccに接続され,残り1箇所はそのままVccに接続されている。で,最初の4箇所のうち1箇所がハンダでショートされている。これは!!

このハンダを外し,各々をVccにショートさせると音が変わるじゃないですか。4箇所あるから4種類?ん,でもこのニュースーパーマリオは2種類しか鳴らない。ROM容量の問題なんだろか。早速ダブリの基板を全部開けてみる。各々B,C,Dとマーキングされている。全部で8種類だから(シークレットは無い筈),残りはA基板か。というわけで解析完了。ニュースーパーマリオでは以下の通り。
A基板START, JUMP
B基板コイン, 1up
C基板MISS, MEGA
D基板クリア, MINI

そこで基板4枚入手して一つの箱に入れればジュークボックスの完成となる訳。A基板が無いので早速例のラジオ会館のガチャガチャに出動。自分で行っているヒマが無いので嫁に代行依頼。ところがこれが中々出ない。散々散財して(って,これ,散財する前に中身バラ売り店で買えばいいのに。この感じだと嫁はギャンブルの負けパターンに確実に陥る性分っぽいのでギャンブル禁止令を出してみた(笑))最後の2個になった時点でようやくGet。あとは4枚分を1つのスピーカーで出力るミキサーをどうするか。元々のスピーカーを4つ並べても良いが,それだと格好が悪い。特にアイデアがないのでGoogleを使って同じようなことをしている人を探してみたのだけど,いくつか出てくるもののミキサーまで言及してないパターン多し。仕方がないのでここは自作してみることに。

ミキサーでまず思いつくのがOPアンプの仮想接地点にまとめて抵抗で落とす方法。サウンドドロップは前述の通りPWMであり差動出力なので,オペアンプの差動入力で受けるか,サンスイのST-11でも使って変換するか。電源は3Vでサウンドドロップと共用にしたいので,低電圧動作可能でないとダメ。部品点数を極力減らしたいので,パワーアンプICが良さそう。最初はLM386でも使おうかと思ったが,よく考えてみたらあれは5Vないとマトモに動かない。となるとNJM2073か。3V動作は問題無い。とりあえず決定。

手始めに実験として,NJM2073の+と−入力にサウンドドロップ出力を繋いでみた。使ったのは秋月で売ってるNJM2073S(DやMとピン配列が違うので注意)。何故か新日本無線のカタログに載ってない(笑)。強烈なディストーションがかかって何だか判らない音。そりゃそうだ,裸ゲインが44dB(約160倍)もあるのだから,いくら絞ってもマトモな音になる訳がない。おまけにノイズは凄いわ発振するわで手に負えない。そこで新日本無線のデータシートを元に負帰還をかけてみることに。こういう時に便利なのがExcel。手放せません。出力はBTLにしてなんとかスピーカーを駆動するだけの電力確保。ライン出力が取れなくなってしまったけど,スピーカーの所にサンスイのST-11でも突っ込んでおけばライン出力も取得可能。

試作してようやく納得いく音になったのが下の回路図。部品点数が増えてしまったので,当初の『シンプル』って目的は達成できず...

ジュークボックス回路図

回路中,C3とC4は発振止め。C5も同様。C1とC2は適切な出力バイアス電圧を得る為に−入力をDC的に浮かす必要があることから挿入。R2,R2とR3にて利得調整。内蔵の負帰還定数と直並列になる。

で,実際に作ってみた。これから作る人の為に参考用の写真も載っけておく。これはニュースーパーマリオではなく,後で入手できたスーパーマリオの基板なのだけど,こちらの基板の方がシルク印刷があって判りやすい。端子名は僕が勝手に付けたので,メーカーに問い合わせないように(笑)。

サウンドドロップ分解図

実際に実装してみるとこんな感じ。

実装

意外に時間がかかって,基板を作り始めてから完成まで約4時間。後で基板を起こすことも考えて配線したのと,部品点数が多くなってしまったのが難だったか。でもこの位だったら金さえあれば専用基板も起こせそう。それを使うなら穴開け無しで30分位かな。出来上がった奴を嫁にプレゼントしたのだけど,音質もなかなかいい感じ。結構気に入ってたのが幸い。

と,ここまで作って気がついたのだけど,元々がPWMなのだから,ミックス時の音質さえ気にならなければ単なるOR論理を並べるだけで良いような気がして来た。74HCでもいいけど,エミッタフォロウのTrのベースに抵抗入れて並べるだけでも良さそう。次回作で実験してみるか。


テレビ用マトリックススピーカー

作成 : 2001.5  掲載 : 2001.8.14

マトリックススピーカー

これは一台のスピーカーボックスだけでステレオ再生が可能という触れ込みで,テレビ等の上か下に置いて使用するものである。実際にこの種のスピーカを用いて広大なサラウンドを体験できるかどうかは聴く人次第なのだが(どれだけ生の音場が脳のメモリにインプットされているかで変化するらしい),省スペースで済み,製作も簡単なので,テレビの内蔵スピーカの音に飽きた人にはお勧めかもしれない。

原理は簡単で,左右の信号に,反対側の信号を何らかの手段を用い逆位相で適量ミキシングしてやるだけである。左右で互いを打ち消し合うので,左は左の音,右は右の音が強調されて出てくるようになる。この方式は特に新しい訳ではなく,30年以上前から存在するらしい。実は大型テレビやラジカセのサラウンド再生モードやiMacのスピーカもこのマトリックス接続になっており,こんな変な自作スピーカーボックスを使わなくても世の中で結構使われているのを見ることができる。

実はこのスピーカーボックス,また例によって必要に迫られて作成したものだったりする。今春,17インチディスプレイを物色していた友人向けにMAGのトリニトロン管ディスプレイを貰ってきたのだが,途中でキャンセルになってしまい行き先が無くなってしまった。もともと素性が良いものであること(この頃はパソコン関連製品も高価な商売だったので結構真面目に作っていた)に加え,ほとんど使っていなかったモノらしく(競馬の配当で流行りモノを買ってはみたが,ホントに買っただけだったらしい),状態はかなり良好。そのまま粗大ゴミに出すのは勿体無く,かといって現用の15インチディスプレイ(Appleマルチスキャン15)を17インチトリニトロン管に変更するだけのスペースはウチには無い。仕方が無いので色々考えた結果,TVチューナ(ただのビデオデッキ)とスキャンコンバータを接続して我が家でテレビとして再活躍することになった。ところがこのディスプレイ,1993年製のオフィス向け高級品で最近出回っているマルチメディア対応とかいう安物ではない。その頃のパソコンはMacやFM-TOWNS等の先駆者を除いて,標準装備ではピーとかいうブザー音しか出なかったのが多勢だった為,ディスプレイ側にスピーカーが付いていない。必要なかったのである。

ちなみに施行中の家電リサイクル法ではテレビは対象であるが,パソコン用ディスプレイは対象外である。どこまでがテレビでどこからがディスプレイなのかの線引きが昔の物品税みたいで納得いかん部分もあるが,ディスプレイを粗大ゴミに出すときにもし断られたら,『あなたの認識は誤っている』と交渉してみると良い。

そこでマトリックススピーカーを自作することとなった訳である。ベースは長岡鉄男氏のMX-2。これを17インチディスプレイの上(または下)に置けるように変更した。この形式はスピーカー3台と配線のみで和と差の信号を生成するというモノで,後は普通の2チャンネルアンプだけあれば良いという,もっとも簡単にできる方式である。スピーカーの回路図と原理は次の図の通り。

回路図

回路はオームの法則と中学校低学年程度の簡単な方程式で理解できるので解説は省略するが,左のスピーカには半分の大きさで逆位相の右信号が,右のスピーカには同様に逆位相の左信号が入る。もちろんこの回路を満足させる為にはアンプの出力は片方がグランドに接続されているアンバランス出力でなければならず,BTL接続等のバランス出力ではアンプが壊れてしまう。従ってカーオーディオ用のアンプは使用できない。インピーダンスは1.5倍で,8Ωのユニットを用いた場合は12Ωとなる。今回は工作を簡単にする為,スピーカーは仏頂面に3つ並べただけとした。これで上手くいくかという疑問があるが,長岡氏の実験によると「ほぼ問題なくサラウンド感が得られる」という話なので採用した。合板の斜めカットは断られる場合があり,お店を選ぶのである。

材料価格(税込)
スピーカユニット
FOSTEX FE87
¥2.500 x 3
木材一式(加工費込み) ¥2000位
配線材,接着剤等 計¥500位
¥10,000位

ダクト作成中 こんなモノに計1万円もかかってしまってローコストと言えるのかどうかは謎だが,データの揃った防磁型のユニットは他に無いので仕方が無い。ユニットは今製作するなら新製品のFE87Eの方が面白いかもしれない。これは最近のESシリーズと同じ素材のコーンを用いた改良品で,高域のヌケが良くなったモノらしい(何故かFOSTEXのカタログに載ってないので詳細はわからないのだが,この間秋葉原のコイズミ無線のオジサンに聞いたらそう言っていた)。木材は今回はMDFを使用。それも密度の低いモノを使用し,重量を減らしてテレビの上に安心して置けるようにした。本来ならば重く密度の高い材料を使うべきであるが,安全を優先したのである。音質は劣化するが仕方が無い。その代わり正面を面取りしてルックスを良くしてある。今回はMDFの質感をそのままに無塗装としたので,まるで無印良品ブランドの製品のような感じに仕上がった。

設計はMX-2がベースだが,幅を17インチディスプレイと同等に変更した。この為ユニットを10cmのFE107から8cmのFE87に変更。ダクトのチューニングもユニットに合わせて高めに変更(図面を引き間違えて予定より低くなってしまったが)。数値は長岡氏の教科書を見ながらかなり真面目に計算したのだが,ベースは振動板面積比である為,基本的にはほぼすべての寸法を約0.8倍にするような変更で済んだ。(板カット図は2001年5月の日記に掲載したので,そちらを参照願いたい)

実際に出来上がったモノを予定通りディスプレイの上に載せて試聴してみると,結構面白い音のするスピーカーであることが分かった。テレビ用には十分使えるし,(人によるが)サラウンド効果も得られる。小型なので低音はあまり出ないが,外付けスピーカー端子が付いた大型テレビをお持ちの方は試してみると面白いかもしれない。


バックロードホーン型スピーカー D-100

作成 : 2000.6〜8  掲載 : 2001.8.9

長岡式D-100 故長岡鉄男氏設計のスピーカである。訃報が話題になったとき,追悼作として一発作ってやるかと奮起してみたのだ。なにしろ突然の出来事だったので,当初何を作成するか迷った。

長岡氏といえばやはりバックロードホーン。しかし代表作スワンはリアダクト(低音用の開口部が本体後方にある)の為,壁に密着できず場所を食うので却下。共鳴管は面白いが置き場所がない。そこでもう一つの代表作,彼がメジャーにした直管連結タイプのバックロードホーンのいくつかの作例のうち,彼らしくローコストに徹するということでD-100に決定。2000年6月位から製作を開始し,7月に完成。塗装をする場所がないので友人宅の庭を借りる形でそのまま置いてきてしまい,2001年6月にやっと我が家の家族入りである。

という経緯で作成したスピーカ。図体は多少大きいが,ポピュラー音楽を楽しむには丁度良い音色でお気に入りである。さすが10cmユニットで音のまとまりが良く,ワンポイント録音したライブの生録はPAや生声がリアルに再現する。低音も割とバランスが良く,10cmなのに気持ち悪い程出る。といったところ。このスピーカは割と簡単な構造でありローコスト故,いわゆるディープなオーディオマニアではなく一般の音楽ファンが暇つぶしに作成するのに丁度良いスペックだと思う。

工作はそう難しくはなく,スピーカー工作初心者でも長岡氏の著作と日用大工のツボをある程度押さえた知識があれば作成可能である。オーディオマニアには音が物足りないが,音に相当こだわるならこのD-100ではなく,同等の箱で高価なユニットを用いたD-118に物量惜しまずというのが良い(高級CDに高級アンプでないと追加コスト分の違いは出ないと思うが)。工作ができない場合はカネコ木工のKD-100というD-100亜流の市販ユニットがあるそうなのでこれを購入すれば良いと思う。これはローコストではないし,設計が多少異なるのだが,長岡氏によると似たような音だそうであるから長岡式10cm直管バックロードホーンの雰囲気をそのまま味わえる。

いいとこづくめのようだが,欠点も多い。一番困ったのが重いこと。重い。重い程良い音がするというのが彼の理論なので仕方がないが,作成や移動が大変である。今回も色々と手伝ってもらった。デザインものっぺらぼうで面白みがない。木目調に塗装したら家具のようになってイメージがガラリと変わったが,塗装前のままでは使う気がしなかった。

材料価格(税込)
スピーカユニット
松下EAS10F20
¥3,800(コイズミ無線)
木材一式(加工費込み) ¥10760
配線材,接着剤等 計¥2500位
塗料等 計¥3000位
¥25,000位

内層を接着中 スピーカーユニットは明るいナショナル製。アルミキャップ付のメカニカル2WAYで,中央のキャップの部分が高音用,外側のコーンが低音用となる仕掛けである。高級品でないので繊細さは無いが,マグネットはかなり強力。明るく華やかでパワーのある音色という評。実際使ってみると正にそんな感じで,高級感は無いがポピュラー音楽用としては相当使えそうな感じである。強力マグネットを積んでこの価格で儲かっているのかどうか不明だが,松下のこの力作もソニー系列フォステクスのライバル機(FF125K,FE108Σ)があったからこそである。松下のオーディオ事業部の体制がリストラの嵐の中で今後どうなるかは興味深いところであるが,スピーカーユニット事業はやめないで欲しい。

木材一式は実家の近所にあるいつもの店。ローコストに徹する為ラワンベニヤを使用したが,目が非常に荒く,後行程の「塗装の目止め」が大変になってしまった。カットの方は数カ所組み合わせの座りが悪くカンナのお世話になったが,どれも1mm未満の誤差であり特に問題なかった。今回は接着剤オンリーでの組み立てなので,接着部にはハタガネを多数使用。直角用のクランプも使用した。しかし長岡式,部品が組み上がる度に重くなるのである。重くて丈夫で鳴きが無くてローコストが彼の座右の銘だが,筋肉痛や腰痛に悩まされてしまった。工作泣かせである。

塗装は自室では困難な為,友人宅の庭を作業場として借用することにした。同じく場所に恵まれない他の人はどうやって塗装しているのか興味がある。との粉である程度の目止めの後,和信ペイントの油性着色ニスで塗装。これを夏の炎天下で作業したのが失敗だった。油性は水性より乾きが遅いので,コシの強いハケを使えば着色の具合を油絵のように調整できる筈なのだが,なにせ炎天下。塗ったそばから乾いてしまい,期待通りの作業は出来なかった。着色ニスでの一発作業(一発といっても3度塗りだが)ではなく,一度オイルステンでしっかり下塗りをして,板の着色の感じを調整してから着色ニス仕上げをした方が良かったのだと後で気が付いた。なんとかゴマかして家具調に仕上げてみたが,極近で見るとアラが沢山見えてしまう。写真に撮ってもムラが目立つ。これらは次への課題(次はあるのか!?)となった。

現在は別途作成したアンプと共に,わが家のオーディオシステムの中核をなしている。今の所部屋が狭いので大音量は出せないが,使う度に音が良くなっていくので(エージング効果)今後が楽しみである。


AMラジオ用ループアンテナ

Dec 2000

ループアンテナキット 2000年10月からTBSラジオで『半年限定鴻上尚史の博愛ラジオ』という番組がやっている。僕は鴻上ファンなのでずっとエアチェックしているのだが,当初エアチェック用に使ったAMステレオ対応ラジオ(ソニー製DCR-AM1/春に廃車した飴屋車Rev.1に積んでいたモノ)は電源を入れてから10時間程度で自動的に電源がOFFするという,留守録には何とも余計な機能がついていることが1週分のエアチェックの失敗で判った。そこで真面目なFM/AMチェーナ(昔,好きな歌手が遠くの地方FM放送局でラジオ番組をやるからと言ってわざわざ中古で買ってきたソニー製ST-S222ESR)を用いることになったのだが,この手の機械でAM放送を聞く場合は付属のアンテナでは非常に置き場所に苦労してしまう(据置場所によって感度がまるで変わってしまう)。かといってAM放送用のアンテナなんて市販品はなかなか無く(ある場所にはまだあるのだが),あっても手工芸品だったりするのでモノの割には高価である。かといって一から自作するには大昔の参考書や無線雑誌の記事をひっくり返して計算しなければならなかったり,今では入手困難になってしまったバリコン(可変容量コンデンサ)を探さなければならなかったりで,ちょっと気が進まない。

今回色々と物色していた所,秋葉原の富久無線でミズホ通信製のUZ-K1というアンテナキット(左写真)を見つけたので早速購入し製作してみることにした。このお店は今では本当に数少なくなってしまったアンテナ専門店。ハムやCBとはあまり縁がないが,いわゆる一般の放送受信用のアンテナの部品なら,かなり特殊なモノでも入手可能な頼れる店である。パソコン屋なんかに衣替えしないことを望みたい。

さてこのキット,パーツキットと名乗っているだけあって,中身はビニール線が長短2本と可変容量コンデンサ(以下バリコン)の入ったハコと,通信機(ラジオ含)接続用のRFケーブルのだけのセットである。説明書を読んでみるとハンガーなりダンボールなり適当な材料で一周2.9m程度の枠を作ってビニール線を巻けと書いてある。どんな材料を使ってどのように仕上がるかは,作成者の腕のみせどころらしい。そこでオーソドックスに適当な角材を下の図面のように加工し,十字に組み合わせて枠にすることにした。

アンテナの材料加工図

対角線一辺の長さを約1mとし,約0.7m四方の正方形を作ることにする。そうすれば一周2.8m前後となり,とりあえずキットの標準仕様は満たすことになる。問題は1mの木材を入手するには1.8mの木材2本からカットしなければならないことであり,0.9mであれば1.8mの木材1本で済むので経済的である。ただ,そんなに高価なモノでもないので,今回は作成マニュアル(といっても紙一枚)に忠実に製作することにした。

材料価格(税込)
アンテナキット ¥2,800(富久無線)
木材(30x14x1820)×2 ¥760
ヨリ線バンド,接着剤等 計¥500位
¥4,000位

キットは前述の通り秋葉原の富久無線。木材は近所のホームセンターで,今回はノミ加工があるので軟らかめのエゾマツを購入。他に少量の接着剤とヨリ線止めのバンドを使う。出力線は束ねるのは可能だが,撚ってはいけないということでスパイラルチューブを用いて整理した。

木材はピラニア鋸とノミを使用して加工した。人力のノミを使うなんて本当にしばらくぶりなので最初は戸惑い,2本の棒を上図の図面のように仕上げるのに2時間程度かかってしまった。仕上げはそこそこ綺麗に出来たのだが,時間がかかり過ぎなのでプロの大工や指物師さんなんかには笑われてしまうかもしれない。2本目が仕上がった段階で接着剤と木槌を用いて右写真のように組み合わせるとなんだかアンテナらしくなってくる。この状態で1辺が1mもあるので狭い部屋の中では製作が困難になってくるのだが仕方が無い。やっぱり市販品にすればよかったかなぁと思いつつもビニール線をタオルでほぐしながら巻き,バリコンの入ったハコに接続して完成となる。

左写真は完成したアンテナをプラスチック製のクサリを用いて自室のカーテンレールに吊るした写真である。写真にはカーテンとアンテナしか写ってないので大きさがわかりづらいが,結構大きくて邪魔モノである。やっぱり半分位の大きさにして,素直に巻線数を増やしたほうが良かったかもしれない。

動作は予想通り感度良すぎで,部屋中の電波ノイズを拾うので同調点では全く実用にならない状態である。ゲルマニウムダイオードとクリスタルイヤホンを付ければそのままラジオになるんじゃないかと思う位ヘンな物になってしまった。1次巻線とバリコンがLC共振した信号を2次巻線が拾って通信機のANT端子に送るという単純なモノなので(昔の1石レフレックスラジオなんかの高周波同調回路と全く同じ),検波回路とつければそのまんまナンチャッテなラジオなのである。でもクリスタルイヤホンもゲルマニウムダイオードも既にほぼ絶滅しているだろうから,このままラジオにするにはちょっと智恵が必要かもしれない。同調点をかなり外して使う分には,いままでのアンテナより全然良いモノとして使えた。当初の目的であるチューナーの置き場所を移動できただけでも大成果であった。


パソコン用ローコスト・ミニスピーカー

Jun 1999

スピーカーの写真 愛用のMacのCRTディスプレイを15インチから17インチに変更したときに,ディスプレイ内蔵スピーカーが無い為に作成したミニスピーカーである。市販のパソコン用ミニスピーカーを色々と探したのだが,どれもオモチャのような音で気に入ったモノが無かった為,仕方がないので作ってしまったモノ。

オーソドックスに小型スピーカーで低音までちゃんと再生するには密閉箱である。ユニットをフォステクスFE87とし,密閉箱で設計すると4リットル位の箱で150Hz前後をブーストし(計算式は分数あり平行根ありで書くのが面倒なので省略),そこそこ普通の音になる。これはこれで良いが,どうせ自作するなら音づくりを狙ってみようということで,今回はパソコン用にチューニングしてみた。用途はMacintoshとテレビ音声の再生なので,低音は普通のテレビ並みで良い。それよりもコーンを自由にして細かい音まで出るようにし,MP3エンコーダの音質比べ等に使用できるようにしたい。という訳で,セオリーからは思いっきり外れた音響迷路という方式を取ってみた。オーソドックスな小型スピーカーなら,市販のAV用でも構わないのである(パソコン用はロクなモノがないが)。

音響迷路とはユニット背面の音(表面に音を出せば,当然同じだけ背面にも音が出る)を迷路に通す。この迷路を通すことによって中高音を落とし,低音のみとなったユニット背面音を表に出せば,同位相で最大3dBアップするのではないかという代物である。これを単なる迷路でなく,徐々に広げるようにすればホーンとなり,低音が増強されて出てくる。これが故長岡鉄男氏お得意のバックロードホーンとなる訳だが,今回は使用するユニットをFE87とする為(本当はもう少し安いのが欲しいのだけど,防磁タイプでデータが揃っているのはこれしか思い付かなかった)ホーンにはしなかった。このユニットでは磁石が弱すぎて計算通りホーンをドライブしきれないそうなのである。今回はスピーカー箱の背面から低音を出すようにし,ぐるっと回って1.3m程の迷路長となるように設計。130Hz前後をちょっとだけブーストすることになる。FE87は160Hzからダラ下がりなので,丁度良い位になるつもり。

材料価格(税込)
スピーカー(フォステクスFE87) ¥2,500位×2(コイズミ無線)
サブロク半裁(ラワンベニヤ9mm) ¥2,000位(カット代込)
ターミナル,配線材,接着剤等 計¥500位
¥7,500位(2本)

FE87は秋葉原のコイズミ無線で買うとカタログ定価の2割引くらいになる。今回吸音材は使わない。ベニヤ板は新木場のもくもくで調達。このDIYショップは10年ちょっと位前から新木場で営業していて,電車で2分離れた東雲にスーパーオートバックスができる前まではカーグッズのショップでもあった(今でも多少置いてあるが)。板材もカット代も東急ハンズより断然安いが,半裁は900mm×900mmのサイズとなるので注意(今は変わったかもしれないけど)。半裁でも結構な重さになるので(僕は手で運んだが5月なのに汗だくになってしまった)車で行くことになるが,客が多いと受取は後日来店にした方が良い場合もあるので,東急ハンズが近くにある場合は東急ハンズの方がガソリン代を考えると良いと思う。

スピーカーの内部写真 図面は書くまでもないので省略するが,内部は右の写真のようになっている。サイズはおおよそ300mm角である。内容積は9リットル位で,密閉箱だと丁度f0周辺の140Hz前後に山が出る計算である。定在波が恐いが,密閉ではないし余計な板が3枚ついているので大丈夫だと思う。実際のところ箱鳴りはそんなにしない。

正面バッフルにはユニット取付用にφ71mmの穴を開けてもらう。ターミナルは無くても良いが,不便なので¥100のローコストなバナナチップ仕様のターミナルを付けておく。実験用のブレッドボードに使うのと同じタイプである。もっと安いのでも良いが,9mmの板を貫通できないと固定と配線ができない。内部配線は特にこだわりもなく太くも細くもない普通のスピーカーケーブルを使う。ここは太くしてもあまり意味がないし,あまり太いとユニット側の配線用チップを折ってしまう。面倒なのでターミナルへは直接ハンダ付けした。直接ハンダ付けする場合,出力の大きな半田コテでスッと付けるのがコツである。でないと熱容量が足りずイモハンダになってしまったり,ターミナルのモールド部分を溶かしてしまうので注意。

(1)の部分が開口だが,ここにスピーカーの吸音材として市販されている厚手のフェルトを突っ込むと密閉箱としても動作する(密閉箱というよりはダンプドバスレフなんだろうか)。明らかに低音が変わりCDをかけると多少量感が増えるが,テレビの音では元の方が良く聞こえる。全体としても,ユニットに背圧のかからない音響迷路の方が細かい音が出て僕好みではある。

で,このスピーカー,後述の一緒に作成したアンプと共にPowerMacintosh G3 MT266に接続して試聴してみる。なかなかそれなりに良い音で,市販品には無い味がある。MP3のエンコーダの違いが良く音に出るので,目的達成というところだろうか。


といったところだったが,1999年9月に引っ越しをしたら17インチCRTが置けなくなってしまい,スピーカー付15インチCRTに戻ったので不要になってしまった。せっかく良い音なので,引っ越し先では後述のアンプと共に,何とオーディオ用スピーカーとして使っている。パソコンもこっちの方が音の相性が良いのでパソコン用としても兼用である。オーディオ用として低音は全く期待できないが,FE87のお陰か女性ボーカルがもの凄く良い。特に谷山浩子さんのような倍音をあまり含まないクリアな声が色っぽくていい。金に糸目をつけないオーディオマニアでも女性ボーカル用にFE83(叉はFE87)を使ったローコストな小型システムを使う人がいると言うが,わかる気がする。こんなスピーカーでも,サブウーファさえつければオーディオ用としても十分いけそうである。

今後,立派な測定用マイクとマトモなマイクアンプとスペアナソフトを入手できれば,測定しながら多少改良できるかもしれない。


パソコン用ローコスト・ステレオアンプ

Jun 1999

アンプの写真 スピーカーはアンプ内蔵にはしなかったので,外付けアンプが必要である。さすがにMacintoshのライン出力ではスピーカーは鳴らない。さすがにこういうのは市販品では全くないので,作ってみた。

ローコストに徹するならLM386(¥50)使用の簡単なパワーアンプで良いが,LM386ではちょっと大きな音を出すとすぐ歪んでしまう。今回のスピーカーは能率が低いのでこれでは使えない。そこで目を付けたのが秋月電子通商で売っていたパワーアンプモジュール。ステレオ分2台で¥1,000とまあまあ安い。これは買ったことのある人,叉は「秋月電子通商キット取扱説明書回路図集CD-R」という便利なんだかゴミなんだかよくわからないCD-ROMを持っている人なら分かると思うが,何とマニュアルが中国語である。POWER AMPLIFIERの下に『功率放大器』と,デカデカと書いてあるのにはウケてしまった。大陸製かと思ったら台湾製らしい。東芝のTA7252APを使用し,4Ω負荷でVcc14.4V,出力6W/10%歪というまぁまぁのスペック。今回は8Ω負荷で1W前後しか使わないので,これなら使えそうである。ただ,中をみると部品が寂しい。マニュアルに『伴唱放大用(随身聴)』(何だこりゃ)なんて書いてあるだけあって,使用部品がオーディオ用とはかなりかけ離れている。さすがにこれでは寂しいので入力と出力のカップリングコンデンサーを容量アップしエルナーのセラフィン物に交換(さすがに高価なOSコンまで奢る気はしない)。最近こういうマニアックな電気部品を扱う店が次々とパソコン屋になってしまうのが寂しくて仕方がないが(otecがパソコン屋になって,RCA社の特殊なオペアンプが入手できなくなってしまった。トラ技の広告でも使って他を探すしかないか),これも時代の流れだと思って諦めるしかないのか。ついでに電源のパスコンも劣化が心配なので105℃品に交換。これで音質はかなり上がった筈。

アンプの内部写真 電源は1.3AのACアダプタと,1A程度の普通のトランス電源と,12V2A出力のスイッチング電源の組み合わせで例のスピーカーを使い試聴してみた。ACアダプタは低音が全く出ない。普通のトランス電源は中高音がちょっとだけ良かったが,低音がボンボンいっている。スイッチングレギュレータは馬力があって低音の締まりがすごぶる良い。2A程度のトランスを用意すれば変わっただろうが,実験用とは別に購入すると高いし重いしかさばるしで他に良いところが無い。そこでスイッチング電源に決定。こいつは電源ケーブルがオマケで付いて¥500と安かった。どうせMacintoshはスイッチング電源なのだから,ここだけトランスにこだわっても仕方がないのである。低音が引き締まった良い音になった。低音を出すだけなら最近流行の電流フィードバック回路も面白そうだが,貧乏なのでうっかりスピーカーを焼いたら代わりが買えない。あきらめよう。

内部配線は,入力から2連ボリューム(20KΩAタイプ)を経てパワーアンプモジュールへ。入力が元々モジュール内についているボリュームと並列になってしまうので入力インピーダンスが結構下がるが,まぁ問題ないと思う。今どき出力は殆どオペアンプだろうから,47KΩで受けないとならないなんてことは無いと思う。パワーモジュールの出力はそのままスピーカー端子に直結。本当はミュート用のリレーと周辺回路の準備(といっても設計と実験まで)をしておいたのだが,ケースが小さすぎて入らずに断念。まぁ,FE87が相手なら電源のON/OFFのショックで飛ぶようなこともないと思うが,マトモな2ウェイを使う場合はちょっと恐いかも。

電源配線は,コンセントから電源用プッシュスイッチ(たまたま入手したのが耐圧135V3Aだったので,電源にそのまま使ってしまった)とヒューズ箱(置き場所が無いのでラインに直結するタイプ)を経て,スイッチング電源へ。この出力をシャレで入れたラインフィルタを通して直接パワーアンプモジュールに分配する。パイロットLEDもここから電気を供給する。シャーシへはモジュール側の電源供給点で1点アース。

ケースはタカチ電機だったかのプラスチックケース。フロントとリアのパネルだけアルミ製のもの。予算の関係で金属製のそこそこ良いデザインの物が買えなかったのである。左側に電源,右側にパワーアンプモジュールを入力が外を向くように配置(ノイズだらけの電源に寄らないように)。ケースが小さくギリギリの配置になってしまった。パワーアンプモジュールの電源はスピーカーケーブルを用いて配線。この周辺は出力の高い半田コテを使わないとイモハンダになるので注意。こういう場合,昔は100Wコテを使っていたが色々と面倒なので,今はブタンガス式のコテを使っている。これは15Wから100W位まで調整可能で,電源不要なので自家用車の中のハンダ付け等にも便利(もともと車のオーディオが故障したときに買ったモノだったりする)。もちろん突然のガス切れには弱く,最近ちょっと酷い目にあってしまったりもするのだが。

こうやって完成したローコストアンプであるが,そこそこの音がする。安物ラジカセ用のICではあるが,電源が強力なのとスピーカーが良いのが相まって,こんなモノでも安物ラジカセでは聞けない音が出るのである。

材料価格(税込)
アンプモジュール ¥1,000(秋月電子)
スイッチング電源 ¥500前後
ケース ¥1,000前後
ターミナル,配線材,部品等 計¥900位
¥3,400位(ステレオ)


更新 2001/08/09
もどる