今日は長洲に行くことにした。香港島の最西端から更に西へ約10キロに浮かぶ島。広東語で洲は島の意味があるので,日本風に言えば長島。香港の長洲は日本の三重の長島のように高速道路は通じてないが,中環からフェリーで簡単に行くことが出来る。
場所はこのへん。
この島は短期滞在の観光客が行く場所というよりは,香港人が海水浴や恋人同士がデートに行く場所だそうで,垢抜ける前の江ノ島のイメージに近いかもしれない。宿泊施設は普通のリゾートホテルが1軒(長洲華威酒店)。他にB&B(朝食とベッドのみの民宿)や,渡暇屋と呼ばれる簡易ホテル(狭いワンルームアパートの1室を宿泊施設として貸しているようなイメージ)に泊まってビーチを楽しむような場所。この島が年に1度賑わうのは旧暦の佛誕(日本で言う花祭り:旧4月8日)と,その前1週間。大イベントである長洲饅頭節で大賑わい。平安と書かれた饅頭を奪い合う搶包山がメインイベント。饅頭をタワーにして,そのタワーに登って奪い合うというもの。高さが高い所にある饅頭ほど高得点なので,参加者は皆必死に登ってタワーの上部から饅頭を奪い合う。すると奪った分だけ自分と家族に平安と好運がやってくるという。世界各地に似たような祭りはあれど,それを饅頭のタワーでやるってのがいかにも香港らしい。(ちなみに,今年の予選会は日本人もいたらしい。)
思えば昨年10月,香港ミニチュア展でこの展示を見たのがキッカケ。
まずは長洲行きのフェリーが出ている中環に向かうべくトラムに乗る。地下鉄でも良いのだが,どうせ中環で同じ位歩くのだしトラムなら景色が楽しめる。
そごうにクロネコヤマト。ここは一体どこの国。
散水車
レールの下はこのようになってました。
Apple Watchの行列。
昇り龍っぽく見せているのが香港らしくて好き
迷ったままだと体力も精神も疲れてしまうので,IFCの中を郵政総局まで戻って,スターフェリー乗り場経由で向かうことにする。以前は郵政総局の目の前にスターフェリー乗り場があったのだが,保存運動も実らず埋め立て。埋め立てで出来た土地に上環と湾仔を結ぶ高速道路を建設中。とは言っても道路で使う土地はたかが知れており,残りの土地の一部で昨年末から期間限定で観覧車香港摩天輪が営業中。ゴンドラの中は冷房付きで快適らしい。でも一回$100ってのがいただけない。今のレートだと1600円だ。$168(約2600円)するSKY100展望台よりは安いが高さは全然違う。いずれにせよおいらのような庶民には近づけない場所っぽい。
海岸線は郵政総局の遥か遠くにお引越し。
フェリー埠頭までひたすら歩く。
香港摩天輪。3年間の期間限定。
スターフェリーの乗り場付近でビッグバスが客引きしていた。代理店購入より全然安かったが,今日は長洲へ行くつもりなので見送り。そのまま左へ曲がって5号渡輪碼頭に向かう。道に迷って遠回りはしたけれども急げば10:45発の高速船に間に合いそう。長洲行きの船は3階建1400人乗りの普通船と,双胴400人乗りの高速船がある。運賃は普通船普通位<普通船豪華位<高速船の順で,普通位が$13.2,3階の豪華位が$20.7,高速船は$25.8(2015/4現在),日曜祝日は約1.5倍。高速船はその名の通り,普通船の1.5倍くらいの速度。デッキには出られないけれども,エアコン完備の快適船というのが売り文句。5号渡輪碼頭に着くと新輝捌が泊まっている。出発時刻まであと2分だがまだ乗れそうなので,急いで飛び乗ることに。
離島行きフェリー乗り場はこちら
新輝捌の船内。長洲行き。前方の非常口にはやたらと出口と書いてある。
この船は高速船だがマカオ行きのように外洋に出る訳ではないので最高速度は僅か27ノット(50Km/h)。船体が宙に浮いているジェットフォイル程ではないが,この位のスピードでも波を受けるとかなり前後に揺れる。出航から30分程で長洲付近に到着し,ゆっくりと接岸。さすがに高速船でも長洲湾入口付近から接岸まではゆっくり。
長洲渡輪碼頭
新輝捌の勇姿。Marinteknik CPV 36 Catamaran シンガポール製
フェリーターミナルから外に出ると,いきなりマクドナルドとサークルKとウェルカム(スーパーマーケット)の洗礼が。その脇には渡暇屋の代理店屋台(ビーチパラソルの下に人が座っているだけだが)も沢山。泊まる気と多少の広東語会話能力があれば,ここで宿の手配が可能。このサークルKの脇が島のメインストリートの一つである東湾道。まっすぐ行くと200mくらいで島の反対側のビーチに出る。
いきなりマクドナルドとサークルKの洗礼
この島の乗用車は緊急車両とコレ(お年寄り用バス。どう見ても軽トラ)のみ。
お祭りの準備
まずは甘永泰魚蛋に寄って,魚蛋をいただくことに。これは香港の食べ物で,串にさしたツミレ団子。ツミレの中身は色々。店頭には生の団子が並んでいて,注文するとその場で串の状態で揚げてくれる。ここで四寶丸(4種類の団子を一つづつ)と三文魚をいただく。揚げ上がった串はキッチンペーパーのような紙に包まれて渡されるので多少の汁垂れは無問題。魚の旨味がよくわかるアッサリ味。美味。
甘永泰魚蛋
注文するとその場で揚げてくれる。
魚蛋=ツミレ。串刺し揚げは香港スタイル。歩きながら食べる。
甘永泰魚蛋を左に曲がって新興街へ。この島は老人向け乗合車と緊急車両以外の自動車がないので,交通は気にしないでゆっくり歩ける。大阪のように我が物顔で走るチャリンコが邪魔だが,これは地元唯一の交通機関なので仕方がない。写真はチャリンコを避けながらDP2メリルでパチパチ。どこを撮影してもそれなりに絵になるのが嬉しい。
チャリにカートを付けて引っ張るってのは初めて見た。
しゅごキャラ!に遭遇。ちなみに美容室。
手作りのぬいぐるみ
電器屋さん。懐かしいゼネラルのロゴ。
LED看板
縦と横らしい。店内で一番目立っていたのはなぜか神棚。
謎の電脳中心を過ぎると通りの突き当たりはイギリス時代の古い郵便ポスト。とは言ってもEⅡRと書いてありエリザベス2世なので1952年以降の設置なのだが,見かけは十分古い。こんな田舎の漁村の島がイギリスだったという証拠。しかしこのタイプ,実物を見たのは初めてかもしれない。ここを左→右とクランク状に進むと,目的地の玉虛宮ももうすぐ。
Wall Boxタイプの郵便ポスト。
路地は続く。
平安包(平安まんじゅう)$10と,いかにも香港なお姉ちゃん。
涼しそうな自家用車
目の前に突然,竹で組まれた骨組みが現れる。搶包山のメイン会場は北帝廟前のバスケットボール用コート。祭の準備で閉鎖中。(ちなみにこの日記を書いているのは正に旧暦4/8の夜。競技用とは別にお供えしてあった饅頭のタワーは長雨が続いてカビだらけになってしまい,さすがに臭いし見窄らしいので作り直したそうだ。搶包山の競技に使われる饅頭はプラスチック製なので無問題。ところが搶包山が始まる前に雷を伴った大雨が降ってしまい,搶包山に落雷の危険が出てきたので中止に。残念無念。)
今回の目的地。北帝廟(玉虛宮)。
入り口の装飾。
奥は長洲饅頭祭の粤劇会場を仮設中。竹で造成するところが香港らしい。
玉虛金廟?
遠近感
北帝
側廊下
屋根には見事な龍が鎮座。
このタワーに約8000個の饅頭が取り付けられる。
新北社街
フェリー乗り場周辺はなんだか漁村っぽい風景。
一応観光地化していて,遊歩道になっている。(とは言ってもこの島に所謂自家用車は無いのでどこでも遊歩道なのだが)
帰りも同じ道ではつまらないので,一本海側の新北社街を抜けて海岸へ出ることにした。海岸沿いの遊歩道の街路樹は香港らしくバウヒニア。香港にはどこにでもあるが,この花はソメイヨシノなんかと同様,自己繁殖は無理で接ぎ木をする必要があるらしい。海岸沿いの道は土産物店や茶餐廳の他に,水着を売る店や簡易ホテルが並んでいる。
紫荊(香港蘭/バウヒニア)。花はそろそろ終わりの季節。
水着の他に平安Tシャツも。I love CCのCCってなんのことやら。calmness condition(穏やかな状態)なんだろうか。
ちょうど高速船が入港中。
茶餐廳に寄ってもう少しのんびりしたいところだが,フェリー乗り場で高速船を見つけてしまう。午後は午後で別の用事があるので高速船に乗れると後が楽。12:45発の改札が始まりそうなので並んでみる。
高速船乗り場。
あと何分で出航かの表示もある。
帰りの船は新輝陸。行きの新輝捌とは姉妹船。同型船は叁,伍,陸,柒,捌の5艘。肆が忌み数なのは香港も同じ。途中で噴射飛航の宇航2004にサッと抜かれる。性能差がありすぎて全く勝負にならず。
こっちは高速船と言えど全速力で27ノット(約50km/h),あっちは全速力だと52ノット(約96km/h)
最近MTRが開通した堅尼地城。堅尼地城游泳池(公共屋外プール)の建物が目立つ。
帰りも30分程で到着。後ろの席のガキがバタバタと煩いが,30分なので我慢我慢。慌てて高速船に乗ったので腹が減った。今日はホテルの無料朝食と魚蛋しか食ってない。そこで折角中環にいるので,いつも寄っているフィリピンのファストフード,Jollibeeに行ってみることに。
行きは急いでいたけど,帰りはのんびり。
歐陸貿易中心と環球大廈の間の路地にある。
奥にJollibeeくんがいる。
日本人にはフィリピンの本家よりも一軒しかない香港店の方が有名だと思うこの店。意外に多国籍企業で,香港の他にはブルネイとベトナムとシンガポール,あとはフィリピン人メイドが多い中東とアメリカにあるらしい。バンズとパティは昔のロッテリアのような感じ。ケチャップやソースは全体に控え目の甘め。これはこれでバランスが取れていて結構好き。問題は,いつも来る度に注文に苦労すること。店員次第なのだが広東語はあまり通じず,英語もなんだか半端にしか通じない。店内はフィリピンの若い女の子でいっぱい。
Burger Steak バーガー用のパティのソース和えごはん。米が喰いたい人用。
AMAZING ALOHA CHAMP 少し甘めの味付け。昔っぽい味だが結構旨い。
Jollibeeで満腹になったあとは,明日の待ち合わせ場所であるペニンシュラの下見。なんで下見に行くのって,何度も香港に上陸しながら,ペニンシュラには入ったことがない小心者なのでどこで待ち合わせするか見当がつかなかったから。ペニンシュラをウロウロしている間にトイレに行きたくなって,向かいのシェラトンにテナントとして入ったそごうに行く。尖沙咀のそごうは尖東の名店城にあったのだが,昨年シェラトンに引っ越し。そごうはトイレでは何度もお世話になっているような。なんだか安心するのよね。
重慶大厦
泣く子も黙るペニンシュラ
謎のそごう30周年キャラ。桜と富士山?
シェラトン全景
ペニンシュラの下見も終わり,今日のイベントはあと3つ。ひとつは頼まれた花文字を作りに赤柱市場に行くこと。2つ目は,赤柱市場に行くのであれば,折角だから香港島一周と大潭水塘(ダム)見物(但し車窓から)をしようという目論見。3つ目は美味しいごはん。
というわけで,赤柱市場に向かうべくシェラトンから尖東の地下道を経由して斜め向かい(前のそごう跡の近く)のバス停から城巴973で赤柱へ。急ぐならMTRで中環へ向かい城巴260に乗るか,もっと急ぐなら銅鑼湾から緑ミニバス40だが,折角尖沙咀から赤柱に行くのなら,このバスを使えば香港島西側半周も楽しめる。ところで,この尖東から赤柱に向かうバスは尖沙咀で複雑な経路を取る。まず海沿いの梳士巴利道を1881 Heritageの手前で右折し,九龍公園径に入る。ここをそのまま進むと佐敦道へ抜けられるのだが,なぜか中港城の手前で300度ターン。廣東道を1881 Heritage方面へ戻る。再び梳士巴利道へ出て,1881 Heritageの奥で左折。再度九龍公園径に入って佐敦道へ向かう。客集めをしたい廣東道が南向きの一方通行なので,隣の九龍公園径を使ってループするという目論見。但し乗客に混乱が無いように,停車するバス停は廣東道のみで2回通過する九龍公園径のバス停は不停車。佐敦道からは素直に西區海底隧道に入り,香港島に入ると坂を登って香港大学へ。そこから香港島の西を周回する薄扶林道に入る。林道とは名ばかりな片側2車線の快適な道。そのまま香港仔に入り旧市街を一周してから元の道へ。湾仔に抜けるトンネルには向かわず,浅水湾方面へ。かなりの遠回り路線なので,赤柱市場までの所要時間は1時間以上。
ちなみにこのバスの終点には香港懲教博物館という施設があるらしい。刑務所の博物館というのは珍しいかも。博物館網走監獄のようなものだろうか。そのうち行ってみたいかも。
新世界中心バス停。1Rのバスは休日限定で昂坪まで向かう。$43だがMTRとロープウェイよりは断然安い。
九龍公園径で見つけた九巴の教習車。
廣東道から見える尖沙咀鐘楼(旧九広鉄道尖沙咀駅)
次のバス停名表示の設備だが,Welcome Aboardと歓迎乗搭の繰り返しで役に立たず。降車場所は風景で判断するしかない。
生蛇健康講座って何だ?
リサイクル屋
元々は犬用美容室だが,閉店するので店で使っていた什器を売っている。
ここに電話番号を表示するセンスが好き。
香港仔。跌打→整骨院のようなもの。もしくは打ち身の薬。
スウェーデンのバンドとは無関係だと思うが。
浅水湾のお約束マンション。撮影したのは初めて。
この赤い旗は何者?
赤柱市場
帰りは西灣河(嘉亨灣)に向かう新巴14に乗る。香港島の東側を回るバスだ。このバスは本数が少ないので,赤柱市場に入る前にバス停の場所と時刻をチェック。そこで八達通(交通用ICカード)を落としてしまうが,すぐに気がついてバス停に戻るとまだバス停の近くに落ちたまま。高級住宅街という場所柄もあるだろうが,人もたくさんいるのに誰にも取られなかったのは奇跡。香港も捨てたものではない。このバス停は香港では珍しく時刻表(広東語で時間表)がついているので,書いてあった時刻の5分前くらいまでに戻ったのだが,予定時刻になってもバスは全然来ない。かなり待ってから来たバスで運転手と客が喧嘩していたが,まぁ渋滞もするだろうよ。バスはなんとか日が昇っている間に大潭水塘に到着。ここでダムの天端を抜けて反対側の岸に抜けるのだが,何せ100年以上前に建造された歴史的建築物なので,天端は狭隘であり二階建てバスと一般車のすれ違いが結構な困難。対向車はバスを確認したら天端の手前で一時停止してバスを過ごすのは日本的マナー。香港でも紳士淑女は似たようなマナーを持っているのだろうけど,残念ながらそういう人達だけではないので,バスがいるのに天端に入ってきてしまう車が多数。そうなると,狭い天端で互いにギリギリまで寄ってすれ違うしかない。バスはその場でしばらく止まったままになってしまった。(おいら的にはゆっくりダム見物ができて嬉しかったのだが)
少し離れた場所にある新巴14のバス停
香港のバスにしては珍しく時刻表付き。便による経由地がややこしいからか。
大潭水塘
バスは筲箕灣の端を経由して西灣河に向かうが,今日の夕食は筲箕灣の阿一(雲南料理)と決めていたので,端ではない筲箕灣に行く必要がある。歩くのも暑いので,安いトラムに乗って終点下車。終点は小さなループになっていて可愛い。ここから5分くらい歩けば阿一。(MTRの方が近い)
筲箕灣の終点ループ。半径10mくらい。
日本で大ヒットのRobiをセブンイレブンで発見。
お徳用ポテチ。袋は似ているがカルビーではない。魚仔餅はおっとっとのパクリ。
阿一豬扒酸辣米綫。看板料理がそのまま店名。手前は日式ラーメン屋(イマイチらしい)
米綫と上海麺を選べる
店に入ると,看板メニューである阿一真味豬扒酸辣米綫と,鮮味蚝仔粥を注文。相席のカップルが話しかけてくるので何かと思ったら,何と4/28まで日本に旅行に行っていたらしい。浅草に宿を取って,渋谷原宿新宿と遊びに行ってたそうだ。特に日本のラーメンが好きで,彼のスマホからは山頭火の写真が出てきた。なるほど,ガッツリした奴が良いのか。ちなみに,阿一の隣は日本式ラーメン店なのだが,彼に言わせるとそこは美味しくないらしい。おいら的に香港の魚介出汁アッサリ味はなかなか好きなのだが,なるほど阿一の米線を食べてみると,雲南料理とあって香港的に結構ガッツリした味だ。彼の勧めで骨つき鳥も追加。美味。
(上)阿一真味豬扒酸辣米綫 (下)鮮味蚝仔粥
美味しいごはんと相席のカップルとの楽しい会話の後,トラムでホテルへ。これで香港島をおよそ一周。おいら的には初めて。
トラムの2階はなんだか落ち着く。
一番シンプルな図案の平安グッズ。左:マグネット,右:クッション
平安:つつがなし。